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琵琶湖の西を、大津から今津に走る江若鉄道の安曇川駅から、バスで西に進むと、道は安曇川の渓谷に入る。その曲がりくねった渓谷の道を行くと、急に谷あひに平野が現れて、何か桃源郷にでも来たような感する。これが朽木谷である。

交通は不便で、それが産業の発展を妨げる一面、生活上の風習や言葉などにも、古いものを多分に残させるといふことになり、それが村人の醇朴さと相俟って、この谷に何かしら桃源郷的な快い観を与える結果を示したのであって、能家は、こうした朽木谷の中の一つ谷、雲洞谷の中の一つの古い村である。

(高島郡朽木村能家民俗資料調査概報　S44.3)